下田島の控え室

女将はしたたか

ランチにはいろんなパターンがある。思ったより出てくるのに時間がかかったり、意外に味が辛すぎて、後でケツがヒリヒリしたり。

 

今日のランチで訪れたのは、強か(したたか)な女将がいる定食屋だった。

 

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※本当は定食屋です

女将にひるむ

女将には勢いがある。語尾に力を込めた尖った声で、食器の残るテーブルへ客を通す。遠目で見ると無表情で、何かをしたら怒られるんじゃないかと思わせるような感じだ。

 

その勢いに僕らはひるんでいた。席に着くと背筋を少し伸ばし、いつもより声のトーンが低くなっていた。普段は仕事の話や雑談をするが、今日はうまくいかない。「醤油はこっちに置いておこう、女将が運びやすいように」とか、「お茶もこっちに置いておこう」と一言二言交わすだけ。

 

「はい、お待ち。お願いね」女将が配膳をしてくれた。席に通されるまでに比べると、少し柔らかくなったような気がした。もちろん顔の表情なんか見れないけど、声色の問題だ。たぶん、かなりのぶっきら棒であることは間違いない。

 

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うまいものを「食べる」という時間

魚の煮つけの定食。そして刺身や付け合わせがついている。もう見た時点でうまいと分かっている。うん、うまい。魚は味がしっかり染みているし、付け合わせも優しい味わい。これでワンコインちょっとなんだから、最高だ。

 

いつもより、食べることに集中する僕ら。ほぼ会話せずに食べ終え、そそくさと店を出た。店から出て初めの一言は、同期の「めっちゃ緊張したねw」だった。いやー、でもうまかった。

 

先輩によると、何回か行くと仲良くしてくれるらしい。一言さんお断りと言われても仕方ないかもしれないが、また来たいと思う。

 

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弱さは、人を強くする

僕は女将のことをずっと考えていた。あんなにぶっきら棒で、真っすぐで。それでも自分を貫き通す強かさがあるのはなぜだろうか。

 

あくまで勝手な妄想だが、女将もきっと、いつぞやの時代にはそのぶっきら棒を直したいと思ったことがあるだろう。ただ、それはもう彼女はあきらめているはずだ。もう彼女自身が何者なのかが分かっていて、すべきことが明確になっている。おいしいご飯を届けることに真剣に向き合っている。女将の不器用さを超えて「また来たい」と思うお客さんは少なくないだろう。

 

何かに真剣に向き合うこと。それは自分の弱みを認めるということなのかもしれない。女将がそれを弱みと思っているかは、分からないけど。その弱さは、きっと女将を強くしたんだ。そんな女将のような人にいつか、なりたいと思う。

 

※この記事は一部フィクションを含んでいます